映画『ソロモンの偽証・前篇』を見た
※ネタバレ注意です映画『ソロモンの偽証・後篇』を見た
原作:宮部みゆき
監督:成島出
脚本:真辺克彦
出演者:藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也、富田望生、前田航基、望月歩、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、黒木華、小日向文世、尾野真千子ほか
ソロモンの偽証 - wikipedia(ネタバレあり)
前篇見てすっきりさせないまま終わらせやがってと思ったけれど、小説読んでいない私としては後篇(2015年4月公開)見ざるを得ない展開に。学生が主人公の映画は良い映画が多いなぁとなんでなんだろうと思ったけれど、きっと子供たちはきな臭く見えない所がいいんだと思う。何を焦点にしてみるべきかは見る人に委ねられるだろうが、わざわざブログに書けそうだと思ったのは以下のテーマ。尚あくまで個人の感想です
・どんな嘘をついているのか
・柏木くんだけは正しいのか
・誰が柏木くんを殺ったのか
・三宅母娘が怖い
・時代背景
・どんな嘘をついているのか
映画のキャッチコピーは「嘘つきは、大人のはじまり。」、応援大使にはゴーストライターの新垣隆さんということで、”嘘”を前面に出しているので、一大テーマであることは間違いなく、誰が嘘をついているかというとこれは見た限り死亡した柏木くんを除き全員と断定してもいいくらいだと思う。ただ登場人物は嘘をついているなりに嘘を隠そうともしていて、日常では流してしまいそうな程度のいいさじ加減。嘘にも「偽善」「利己的」あるいは「利他的」な嘘など種類があると思うので、誰がどんな嘘をついているんだろうと斜に構えて見るのが楽しいのだと思う。そして私としては柏木くんの死の真相もおそらく登場人物の中の些細な嘘に隠れていて(ビリヤードの場面が怪しい)然るべきじゃないかと推理している。
・柏木くんだけは正しいのか
柏木くんというのはこの映画の冒頭で死亡し、物語のきっかけとなった人物であり、おそらく最も厄介なやつで、こいつのせいで後ろめたさを覚える周りの人間は嘘をついていたとしても寧ろ人のいいやつらなのだと思う。黒澤明監督「白痴」(原作ドストエフスキ)で森雅之演じる主人公が周りを不幸に叩き落としているがこれと同類だと思う。どんなやつかというのは映画を見てもらう必要があるが、要するに清廉潔白の聖人のようなやつなのであり、柏木くんに関しては主人公にもろにプレッシャーを与える回想シーンが何度か出てくる。そして彼は悪役ではなくあくまで良い役なのであり、そこが厄介で、見る人によって彼の捉え方は180°異なるのかもしれない。校内裁判によって彼に与えられた強迫観念を解こうとする行為は効を奏するのだろうか。
・誰が柏木くんを殺ったのか
誰が怪しいと言う推理は立ててみたものの、私は映画(前篇)を見ても柏木くんの死の真相は全く分からなかった。校内裁判によって何かしらが解き明かされて行く展開は後篇に委ねなければならなかったけれど、このミステリーな展開は面白い。
・三宅母娘が怖い
映画に出てくる中学生達はみな良家の子息のごとくハキハキと喋り愛らしくもあり、とても印象がいい。特に主人公藤野涼子を演じる藤野涼子さんはそれを象徴するハキハキさ。不良の大出俊次を演じる清水尋也さんは映画「渇き。」のボク役の方ということで驚いた。まえだまえだの前田航基はNHKドラマ「LIVE!LOVE!SING!」で百花と共演しているがかわらずおっとりとしたいい個性を醸し出していると思う。そんな中で同じく「LIVE!LOVE!SING!」に出演していたE-girlsの石井杏奈が中学生三宅樹理の狂気を演じている。
映画(前篇)は「二人の死亡者を出す所まで」と「主人公が校内裁判を開こうと動き始めてから」で二分出来ると思うのだが、映画後半は割と青春映画らしい溌剌路線なのだ。しかし本筋とはやや離れた所で三宅さんの物語は進められていくことになり、三宅家のシーンはむしろ映画前半の深刻さが増していくような怖さがある。娘三宅樹理もさることながら母親の永作博美がやばい。母三宅未来は確か「今日ママ、ブルーハーツのヒロトのインタビューしたんだぁ」というような永作博美っぽい人物描写で登場してくる。彼女は明るくマイペースで安定している。その調子で不安定な愛娘の堪忍袋をナイフでグサグサ突き刺すのが怖いのだ。この母娘が映画(後篇)でどう物語と同期してくるのだろうか。また同級生たちを深刻な状況に巻き込みそうで心配だ。
・時代背景
映画の舞台はブルーハーツ(1985-1995※wikipedia)も活動していたバブル後半の話で、20年後くらいに主人公が教師として母校に戻り当時を回想する所から始まる。私より上の世代の話なので当時のことは良く知らないが、少なくともバブルの持つ意味はストーリーにかかってくるんじゃないかと思う。その辺のところは 宮部みゆきインタビュー - 新潮社 にも少し書いてあった。
以上。